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刑訴法332条

刑訴法332条は,刑事事件の簡易裁判所から地方裁判所への移送を定めています。

要件は,「地方裁判所において審判するのを相当と認めるとき」です。
事案が複雑な場合,法解釈が複雑な場合などが挙げられます。

先日,簡易裁判所に起訴された傷害事件について,捜査段階では自白していたものの,起訴後,私がよくよく聞いてみると,「自分は実はやってない」とのことだったので,公判で否認に転じた国選弁護事件があり,今後,証人尋問等の必要があることから,刑訴法332条の移送になったものがありました。

簡易裁判所の裁判官が,冒頭手続の終了後,いとも簡単に「本件は刑訴法332条により地方裁判所に移送します」と言って,法廷が終了になってしまったのがとても印象的でした。
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# by ofuna-law-02 | 2008-11-27 22:58 | 刑事訴訟法

検事のキャリアアップ

検事には,正検事と副検事がいます。
例外もありますが,原則として,正検事は,司法試験に合格して司法修習を終えた人がなり,副検事は,検察事務官が内部試験に合格するとなれます。

正検事は,地方裁判所,高等裁判所,最高裁判所の刑事事件を主に取り扱います。
副検事は,簡易裁判所の事件を主に取り扱います。

正検事は,全国転勤があります。
副検事は,転勤はあるものの全国ではありません。関東内,東北内といった感じです。

以下は,正検事のことについて書きます。

検事1年目の検事のことを新任検事と呼びます。
新任検事は,最初数か月間は東京地検に配属され,研修を受けます。その後,横浜,埼玉,大阪,名古屋,福岡などの大規模庁(これをA庁と呼びます)に転勤になります。
最初は,窃盗や覚せい剤事犯などの自白事件という比較的複雑でない事件を担当し,それが難なくできるようになると,窃盗や覚せい剤事犯などの否認事件というやや難しい事件を担当し,それが難なくできるようになると,恐喝や強姦などの複雑な事件の自白事件,次に否認事件というように,だんだんと難しい事件を担当して,成長していきます。

検事2~3年目は,新任明け検事と呼ばれます。
新任明け検事は,A庁ではない,小規模庁,例えば,甲府,長野,山形,福島,岡山,高知等地方の県庁所在地にある地方検察庁に配属されます。
刑法犯については,新任検事でだいたい経験しているので,次は,汚職(贈収賄,談合)や脱税事件などを担当して,一通りの事件ができるようになります。
小規模庁では,刑事部(捜査から起訴まで)と公判部が分かれていないところが多く,身柄事件(勾留中の被疑者)が5~6件,在宅事件が10~20件,公判中の被告人の事件が10件くらいを一人で受け持つ(手持ち事件と言ったりします)ことになります。

検事4~5年目は,A庁検事と呼ばれます。
小規模庁からA庁に配属されるため,そのように呼ばれます。
A庁検事となると,もう一人前の検事で,検察庁の中核を担って仕事をしています。
A庁は,刑事部と公判部が分かれているため,刑事部で捜査を専門とする検事や,公判部で後半を専門とする検事に分かれます。
私は東京で公判部でしたが,手持ち事件は60~70件ほどあったという記憶です。昼間は毎日フルに公判に出廷し,アフターファイブにデスクワークをするというハードな毎日でした。

検事6~7年目は,A庁明け検事と呼ばれます。
また小規模庁に行きます。
検事の転勤サイクルは,基本が2年ごとで,A庁→小規模庁→A庁→小規模庁…という繰り返しになるのが一般的です。

A庁明け検事の次の呼ばれ方は特にありません。シニア検事と呼んだりもします。
検察庁だけでなく,法務省や外務省等に出向したり,東京地検特捜部に配属になったり,より大変な仕事を担当していくことになります。
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# by ofuna-law-02 | 2008-11-27 22:57 | 弁護士・検事・裁判官

債務整理 任意整理のメリット

債務整理には,3つの方法があります。
①任意整理,②自己破産,③個人再生,です。

このうち①の任意整理のメリットを説明します。
メリットは大きく分けて3つあります。
1 ひとつは,取引履歴を利息制限法に基づき再計算するので,元金が減ることです。
2 もうひとつは,減った元金に対する将来利息はとられないことです。
3 さらにひとつは,減った元金に対して3年~5年間の長期の分割返済計画が可能となり,月の返済が楽になることです。

金融会社との取引履歴が2~3年あれば,再計算により,かなり元金が減ります。
取引履歴が5~7年以上あれば,利息の払いすぎにより,お金が戻ってくる場合もあります。これを過払い金(かばらいきん)と言います。

減った元金に対して利息が取られないことは,非常に大きなメリットです。
例えば,100万円借りている場合,そのままだと利息だけで年29万円ほどになります。
通常,弁護士費用はそれよりも安いですから,利息の分,得をすることになります。

よくお客様から,債務整理をして,弁護士費用を支払って,自分は損をするのではないか?
との質問を受けます。

この質問に対する回答としては,前述のとおり,元金が減る+利息がとられなくなる+返済が楽になる,という3つのメリットのことを考えると,損をすることはないと答えています。それに,私の場合,もし損になるようならば,弁護士費用を減額し,お客様に損をさせるようなことはしません。これはお約束いたします。

逆に,デメリットはというと,ブラックリストに載ることです。
6~7年ほどは新たな借入やローンを組むことができないのがデメリットです。
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# by ofuna-law-02 | 2008-11-27 22:57 | 債務整理

債務整理 弁護士介入通知の効力

弁護士は,債務整理(任意整理・自己破産・個人再生)を依頼されると,依頼日当日に,郵便で,債権者(会社)に対し,「弁護士介入通知」という通知書を送付します。

これは,債務整理の弁護士費用を分割にした場合も,分割なので着手金は全額はいただいていませんが,とりあえず,着手当日,郵便で,「弁護士介入通知」を出します。

弁護士介入通知とは,この債務者(依頼者)については,弁護士が介入して,債務整理をしますので,今後は,債務者への取り立て等はしないでくださいという内容の通知です。別名「受任通知」とも言います。

任意整理の場合,取引履歴の調査や利息制限法の引き直し計算のため,少なくとも3か月間はかかるので,弁護士介入通知後少なくとも3か月間は,債務者は,債権者(会社)に対し,支払を一時ストップできます。法律上,債権者(会社)は,弁護士介入通知があると,取り立て等ができなくなります。その間に,生活の立て直しができるわけです。

自己破産の場合,全て債務を精算するということですから,弁護士介入通知後は,一切債務を支払わなくてよくなります。その後,自己破産手続をとり,法的に債務を帳消しにします。弁護士介入通知後は,債権者(会社)も,弁護士介入通知が出されているので,取り立て等をすることはありません。やはり,生活の立て直しができるわけです。

個人再生の場合は,弁護士側の準備に少なくとも6か月くらいはかかるのですが,弁護士介入通知後少なくとも6か月間は,やはり,債務の支払は一時ストップします。支払わないでよいわけです。上記同様,債務者は,生活の立て直しができます。

結論的に,多重債務でお困りであれば,弁護士に依頼して,とにかく早く「弁護士介入通知」を出してもらうとよいのです。債務整理の方法により違いはありますが,とりあえず支払わなくてよい状態になり,毎月毎月返済に追われるという状態から脱することができるからです。
債務整理のお客様のほとんどが,そのことを知らず,法律相談の際に説明して,「もっと早く相談にくればよかった」と感想を漏らされます。
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# by ofuna-law-02 | 2008-11-27 22:53 | 債務整理

反対尋問

証人や当事者(以下,「証人等」という。)の尋問は,交互尋問方式といって,主尋問→反対尋問→補充尋問という流れで行われます。

主尋問は,味方側の弁護士が一問一答で事実の経過等を証人等に質問していきます。
次に,反対尋問は,敵側の弁護士が主尋問を突き崩すべく証人等に質問していきます。
最後に,補充尋問は,裁判官が疑問に思ったところを証人等に質問します。

自分の側の証人等とは,事前に打ち合わせをして,主尋問で聞いていく質問をリハーサルしておくとともに,自分が相手方の弁護士だとして,反対尋問でどのような突き崩し方をしてくるかをもリハーサルしておきます。

尋問に先立ち,弁護士は,相手方の証人等がどんなタイプか,どんな証言をするかを想像し,これまで法廷に検出されている客観的証拠と,自己の経験則を手がかりに,どうやって反対尋問を成功させ,相手方の証人等の証言を突き崩すかを考えます。

反対尋問は,成功しないのが普通というのが,弁護士の認識です。
なぜなら,相手方の証人等も,当然リハーサルをして当方から突き崩されないようにあらかじめ準備しているからです。
でも,成功を目指して色々な試みをします。

まずは,自己矛盾供述はないか,思い込み供述はないか,客観的証拠と矛盾する供述はないか,経験則と矛盾する供述はないか,といった点を中心に反対尋問を構想しておきます。
あとは,現場で,相手側の主尋問を聞いていて,何かひっかかる(疑問に思う)点とか,おかしいことを言っていないかとか,臨機応変に対応して,反対尋問をします。

あとは,経験です。

仮に,自分側の証人等が,相手方の弁護士に突き崩されて反対尋問が成功した場合,その事件は負けるかもしれませんが,相手方の反対尋問のやり方から,私自身,多くのことを学ぶことがほとんどです。かなりの経験になります。普通は,リハーサルで想定していた以上のことを相手方弁護士がしてきますから,そんなやり方もあったか,と目から鱗が落ちることもしばしばです。もっとも,先ほども述べたとおり,反対尋問は成功しないのが普通なので,特に,相手方が成功した場合,かなりレアケースとなります。
また,自分の反対尋問で,色々やってみて駄目だった場合も経験になりますし,たまに成功することもありますので,これも自信になります。
現場対応で,その場ではできなくても,後から,ああすればどうだっただろうと思いつくこともあり,それは次の機会に試してみたりします。
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# by ofuna-law-02 | 2008-11-27 22:53 | 民事訴訟法

訴訟費用の確定の申立て

判決の主文は,原告勝訴の場合,例えば
1 被告は,原告に対し,○○円を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
というように言い渡されます。

この場合,訴訟費用とは,印紙代や郵券代,当事者の日当等が含まれますが,具体的な金額が判決の主文では明示されず,実際のところ,「被告の負担とする」とされても,現実に被告に支払ってはもらわないのが,実務的です。

もし,勝訴したのだから,きっちり支払ってもらおうと思った場合は,訴訟費用の確定の申立てを行い,額を確定する必要があります(民訴法71条)。

この度,とある事件で,この申立てをすることになりました。
できることは分かっていても,これまで経験がありませんでした。
一度経験してみれば,論より証拠で,きっと今後役に立つはずと思います。
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# by ofuna-law-02 | 2008-11-27 22:51 | 民事訴訟法

画期的!過払い金返還訴訟実務

最近,興味深い判決が出ました。
札幌高等裁判所平成19年4月26日判決です。
事案は過払金返還等請求の事案です。

この判例は,次の2点において,注目に値します。
1 過払金返還請求が,弁護士を依頼して訴訟によらなければならなかった旨判断し,民法704条後段の損害として,弁護士費用相当損害金30万円を認めた。
2 過払いであるのに,そうでないように装って,借金の請求をした行為は,架空請求として不法行為である旨判断し,慰謝料15万円と,その訴訟の弁護士費用相当損害金5万円,合計20万円の損害賠償請求権を認めた。
という2点です。

すなわち,要するに,①過払金返還訴訟では弁護士費用相当損害金が請求できる場合がある,②過払いであるのに,そうでないように装い,借金の請求をされていた場合は,慰謝料と弁護士費用相当損害金が請求できる場合がある,旨の判決が出たのでした。

さて過払金返還訴訟では,今年2月に,過払金返還請求権の金利が年5分か6分か等について,最高裁判例が出て,同金利は年5分であるなどとされ,その後の過払金返還訴訟実務にかなりの影響が出ていました。
この最高裁判例は,原告(消費者)側に不利で,被告(消費者金融会社)側に有利な内容と言えました。

しかしながら,消費者側に立つ弁護士陣も,金利で勝てないならばというわけでもないでしょうが,慰謝料や弁護士費用を請求する傾向になっていたところ,今回,札幌高裁の判決で,それが認められたわけです。
高裁判決というのは,簡裁判決や地裁判決よりも実務では重視されます。

うちの事務所でも,今後は,過払金返還訴訟では,民704後段の損害としての弁護士費用と,不法行為の損害賠償請求としての慰謝料と弁護士費用を請求しようと思います。
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# by ofuna-law-02 | 2008-11-27 22:49 | 債務整理

訴えの交換的変更

訴えの交換的変更とは,もともとの請求(旧請求)を別途新しい請求(新請求)に交換することを言います。
ここで言う請求とは,いわゆる訴訟物を意味し,要は私法上の権利を言います。

その法的性質については,旧請求の取下げ及び新請求の新たな訴え提起,と解するのが判例・通説です。

実務的には,「訴えの変更申立書」を裁判所に提出します。
そこには,「原告は,次のとおり,訴えを交換的に変更する。」と記載し,変更する請求についての,請求の趣旨と請求原因を書きます。

先日,訴えの交換的変更をした案件がありました。
実は弁護士4年目にして初めての経験でした。
法的性質が,訴えの取下げと新訴提起だからといって,「訴えの取下書」と新訴の「訴状」を提出するわけではありませんので,ロースクール生の方,誤解しないようにしてください。
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# by ofuna-law-02 | 2008-11-27 22:48 | 民事訴訟法

動産の即時取得制度

民法では,権利の客体となる物(ぶつ)として,不動産と動産を区別しています。
不動産とは,土地(その定着物も含む)と建物を言います。
動産とは,不動産以外の物(ぶつ)です。例えば,パソコン,本,ペン,ジュース,自転車,印鑑,紙等々不動産を除くあらゆる物です。

その動産について,民法では,即時取得制度を採用しています(民法192条)。
動産の即時取得制度とは,簡潔に説明すると,動産の取引については,譲渡人が無権利者であっても,譲受人が善意無過失で譲渡人が権利者であると信頼した場合は,譲受人は有効に権利を取得する,という制度です。

例えば,AさんがBさんからパソコンを買ったとします。ところが,Bさんは,そのパソコンをある店から盗んでいたとします。そうすると,そのパソコンはそのお店の物であり,Bさんは無権利者です。この場合,原則は,無権利者から権利を譲り受けることはできませんから,Aさんはパソコンを自分の物とすることはできません。

しかしながら,Aさんが,Bさんが権利者であると善意無過失で信頼していた場合は,即時取得が成立し,例外的に,Aさんは,パソコンを有効に取得することになります。
このような動産の即時取得制度の趣旨は,動産の取引安全を図ることにあります。

なお,不動産には即時取得制度はありません。
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# by ofuna-law-02 | 2008-11-27 22:47 | 民法

山菜と蝶々

Aさん所有の山がありました。
そこには山菜がたくさん繁っています。
お花畑もあり,蝶々がたくさんいます。

さて,その山菜と蝶々は誰の所有物でしょうか?

まず,山菜は,法律的には,土地に付合(民242)しており,土地の構成部分とも言えるため,土地の所有者であるAさんの所有物になります。仮に,第三者が無断で山菜を採ったら,窃盗になってしまいます。ご注意ください。
次に,蝶々は,自由に山を飛び回っており,土地には付合しておらず,法律的には,誰の所有物でもありません。もし捕まえれば,捕まえた人が所有者になります。これを無主物先占(民239)と言います。ですから,仮に,第三者が無断で捕っても,窃盗にはなりません。

なお,住居等であれば,無断で入ると住居侵入罪となりますが,それと異なり,山に入ること自体は罪にはならないと思われます。
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# by ofuna-law-02 | 2008-11-27 22:46 | 民法

請求権の請求原因

ある請求権(人が人に対して何かを要求する権利)が発生する原因については,民法が定めていて,大きく分けて3つあります。

①契約②不当利得③不法行為の3つです。

契約とは,「申込」と「承諾」の合致により成立する請求権の発生原因です。
例えば,売買契約,賃貸借契約,委任契約,雇用契約等があります。
売買契約で言うと,例えば,八百屋で,客が店主に「大根1本ください」と申込をして,店主が客に「いいですよ。1本100円ですよ。」と承諾することにより,客は店主に大根を請求する権利が発生し,店主は客に代金100円を請求する権利が発生するのです。
請求権の発生原因としては,この契約がもっともポピュラーです。

不当利得とは,法律上の原因がなく利得が発生した場合に,利得を返してくれという請求権が発生する,請求権の発生原因です。
例えば,詐欺によりお金がだまし取られたとき,取消ができますが,取消をすると,詐欺行為は遡及的無効になるので,お金は法律上の原因がなく欺罔行為者に帰属していることになり,不当利得返還請求権に基づいて,それを返還してもらえることになります。

不法行為とは,故意・過失により,人に損害を発生させた場合,その損害賠償の請求権が発生するという,請求権の発生原因です。
例えば,交通事故で人損・物損が発生した場合,それは前方不注視などの過失に基づいて損害を発生させた場合なので,不法行為に基づいて,損害賠償請求ができます。

ちなみに,請求権を権利者ではなく義務者の側からみると,弁済(支払)義務となります。

まとめですが,請求権(弁済義務)の発生原因は①契約②不当利得③不法行為です。
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# by ofuna-law-02 | 2008-11-27 22:45 | 民法

事実の錯誤

Xは,日頃恨みに思っていたAを殺そうとして,ピストルでAを狙撃したところ,弾は外れて近くを歩いていたBに命中し,Bは死亡した。

上記事例で,Xに何罪が成立するでしょうか。

常識的に考えると,
Aに対しては,殺そうと思ったのに殺せなかったため,殺人未遂罪
Bに対しては,殺すつもりはなかったのに,誤って死亡させたため,過失致死罪
となろうかと思います。

しかし,判例・通説の考え方は違います。
Aに対する殺人未遂罪とBに対する殺人罪の成立を認めます。

判例・通説は,Bに対する殺人の故意を認めるため,このような結論になります。
そもそも,故意責任の本質は,規範に直面し,反対動機を形成しえたのに,あえて犯行を行った反規範的人格態度にあるところ,人には「人」を殺してはならないという規範が与えられているのであって,Aという「人」を殺そうと思った以上,殺人の故意は「人」であるBに対しても認められる,と説明されます。

ちなみに,このように考える説のことを,法定的符合説と言います。
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# by ofuna-law-02 | 2008-11-27 22:44 | 刑法

殺意の認定

殺人罪で起訴されたが,被告人は「殺すつもりはなかった」と弁解している場合(殺意の否認)が,よくニュースで「起訴事実を否認し,殺意はないと弁解しました」と報道されるなど,ままあります。
ここで争点となるのが「殺意の認定」です。

前提知識から説明します。
殺意とは,人を殺す行為(殺人行為)を認識し認容する意思のこと(簡単に言えば,人を殺すつもりで殺人行為をすること)を言います。
殺人行為とは,人の生命を断絶するに足りる現実的危険性を有する行為を言います。
例えば,人に向けてマシンガンを乱射する行為は,人の生命を断絶するに足りる現実的危険性を有する行為であり,殺人行為です。
この殺人行為を認識し,認容(殺してもかまわないと思う)すれば,殺意が認められます。

なお,殺意には,大きく2つに分けて,確定的殺意と,未必的殺意があります。
確定的殺意とは,積極的に「殺してやる」との意思を有する場合です。
未必的殺意とは,消極的に「殺してやるとまでは思わないが,死んでも構わない」との意思を有する場合です。

殺意の認定は,検察側としては,それをどのように裁判官に認めてもらうか,弁護側としては,認めてもらわないようにするか,が裁判の争点・大きなポイントになります。

このような場合,証拠裁判主義をとる我が国の裁判制度のもとでは,行為の客観的状況(客観面)を証拠で認定し,そこから殺意を認定する手法がとられます。

まずは,行為態様,凶器を見ます。
人に向けてマシンガンを乱射していた被告人が,「人を殺すつもりはなかった」と言ったとしても,人に向けてマシンガンを乱射する行為自体,殺人行為としての危険性が高いので,それを行う場合,殺す意思はあるだろうという思考パターンがとられ,殺意が認定されます。
人をナイフで突き刺した被告人だったらどうでしょうか。
人体の枢要部(心臓や頭)を狙っているか,刺した回数はどうか,傷の深さはどうか,ナイフの刃渡りはどうか,ということを総合的に考えて,殺意を認定します。
例えば,刃渡り20センチのナイフで,心臓付近を5回深く刺していた場合,これは強固な殺意が認定されると思われます。
逆に,刃渡り5センチのナイフで,右腕付近を2~3回浅く切りつけていた場合,これは殺意は認められないでしょう。

次に,動機も見ます。
その被告人に被害者を殺す動機があったか。怨恨等がなかったか。これも関係者の供述から明らかにされ,動機があったかを見ます。

ほかにも,判断要素はありますが,大まかには,以上のような要素から被告人をとりまく客観的状況を総合的に認定し,客観面から,殺意があったか否かを判断するのです。
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# by ofuna-law-02 | 2008-11-27 22:44 | 刑事・少年事件

倒産法制

企業の倒産に対する法(倒産処理法・倒産法制)には,大きく分けて,「清算型」の制度と「再建型」の制度の2つがあります。

清算型の制度というのは,企業を存続させないで,財産を清算し,債権者に分けるタイプの制度です。これに対し,再建型の制度というのは,企業を存続させ,債権者の協力を得ながら,企業の再建を図るタイプの制度です。

清算型の法律としては,①破産法,②会社法に規定がある特別清算,があります。
再建型の法律としては,③民事再生法,④会社更生法,があります。

①破産法は,おなじみの法律だと思います。精算型の代表です。
②特別清算は,株式会社にのみ適用されます。ほとんど実務では使われていません。
③民事再生法は,現経営陣がそのまま在任し,再生計画案を策定し,再建を図ります。
④会社更生法は,大規模な株式会社に適用されます。現経営陣は退陣し,経営のプロが管財人となって,会社再建を図ります。
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# by ofuna-law-02 | 2008-11-27 22:42 | 倒産処理法

刑法の思考パターン

犯罪とは,構成要件に該当し,違法,かつ,有責の行為を言います。

構成要件とは,一般に言う法律要件のことで,~罪として条文に書いてあって,それを主体,客体,行為,結果等に分類しうる要件事実のことです。
例えば,殺人罪の構成要件は,「人」という客体を「殺す」という行為をすることです。
この殺人罪の構成要件の解釈上の問題点としては,例えば,胎児は「人」かという問題があったり,例えば,硫黄を投与した行為(硫黄は医学的には少量ならば飲んでも人は死なない)が殺人行為といえるかという問題があったりします。

単純にAさんがBさんを刺殺した場合を想定しますと,これは殺人罪の構成要件に該当します。
とは言っても,まだ殺人罪が成立しません。
最初に定義づけたように,違法で,有責である必要があります。
これは違法性阻却事由がないか,と,責任阻却事由がないかという判断と同義です。

違法性阻却事由とは,刑法35条などに規定されており,正当行為や正当防衛や緊急避難が成立する場合を言います。
例えば,先ほどの想定事例で,実は先にBさんがAさんを殺そうとしてピストルで体に弾を撃っていた,Aさんは,身の危険を避けるため,仕方なくBさんを刺した。と言うような事情があった場合は,正当防衛となり,違法性が阻却され,犯罪不成立になります。

責任阻却事由とは,責任能力,責任故意などがない場合を言います。
例えば,先ほどの想定事例で,Aさんが,認知症で判断能力が全くなかったような場合は,責任能力がなく,責任が阻却され,犯罪不成立になります。

構成要件に該当し,違法性阻却事由がなく,責任阻却事由もないと,犯罪成立となります。

平成21年5月までに裁判員制度がスタートします。
犯罪の成否に関し,裁判員の判断が要求されるのは,以上の3場面です。
すなわち,まずは,構成要件該当性の有無,です。
次に,違法性阻却事由の有無,です。
最後に,責任阻却事由の有無,です。
事案により,構成要件該当性のみが問題となったり,違法性阻却事由が問題になったりすると思います。
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# by ofuna-law-02 | 2008-11-27 22:41 | 刑法

人権侵害

よく耳にする,「人権侵害」と言ったときの,「人権」ですが,人権とは,対国家との関係で問題になるものなので,使い方に注意・区別が必要です。
言い換えると,人権侵害があった,と言う場合の正しい人権侵害の相手方は,国家(行政,公共団体,公務員)になります。

これに対して,私人間(市民間。侵害の相手方が民間人の場合)では,「人権侵害」という言い方は本当は正しくありません。
例えば,Aさんから嫌がらせを受けたからと言って,「Aさんから人権侵害を受けた。」というのは法律学的には正しくありません。人権の侵害の相手方が私人だからです。

人権という概念自体,歴史的に,専政権力(国家)に不当に圧力を受けてきた人民(国民)が,権力に立ち向かうために生み出されたことからも,対国家との関係で問題となることがお分かりいただけるかと思います。

なお,私人間では,民法709条の不法行為に基づく損害賠償請求や,民法90条の公序良俗違反の中で,権利(人権ではない)侵害といった形で斟酌されます。
人権を間接的に私法に適用していく考え方なので,間接適用説とも言われます。
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# by ofuna-law-02 | 2008-11-27 22:40 | 憲法

差し支え(さしつかえ)

差し支え
名詞:(法曹業界用語)その時間帯のスケジュールが埋まっていること。

(具体例)
裁判官「次回期日は,12月○日午前11時でいかかですか」
被告側弁護士「お受けできます」
原告側弁護士「すみません。差し支えです。福岡出張が入っています」
裁判官「それでは,12月×日午前10時はいかかですか。
原告側弁護士「お受けできます」
被告側弁護士「差し支えです。午後なら空いているのですが」

というように繰り返され,期日が先へ先へと伸びるのが一般。
そのため裁判に時間がかかるという一面もあると思います。

なお,差し支えが少ないと,暇な弁護士と思われてしまう一面があります。
弁護士はプライドが高いので,こういうことをけっこう気にします。

あと,夏休み(休暇)にあたるときに,理由を述べず「差し支えです」という使い方をしたりする弁護士もいます。
実は私もたまに使います。
裁判官や相手方弁護士は仕事だと思っているのですが,実は休暇だったりします。
これは表情からも察せられないことを要する高等テクニックです。
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# by ofuna-law-02 | 2008-11-27 22:39 | 弁護士・検事・裁判官

横浜弁護士会という名前

弁護士は,日本弁護士連合会(日弁連)に登録しないと,弁護士業務ができません。
そして,都道府県ごと(北海道はブロック)に単位会という任意団体があり,弁護士はそこに所属します。

例えば,神奈川県内の弁護士は「横浜弁護士会」という単位会に所属します。
私も横浜弁護士会に所属しています。

最近問題になっているのは横浜弁護士会の「横浜」という名前です。
例えば,長野県内の弁護士は「長野県弁護士会」,山形県内の弁護士は「山形県弁護士会」といったように,単位会の名前は都道府県名が附されるのが一般なのです。

神奈川県内の弁護士といっても,必ずしも横浜に事務所を構えていない弁護士は多いです。
私もそのひとりで鎌倉市の大船に事務所を構えています。
神奈川県内には,横浜地裁の支部が4つあります。川崎,横須賀,小田原,相模原です。
このような横浜以外の地区に事務所を構える弁護士はけっこういます。

そこで,最近議論になっているのが,改名問題です。
横浜弁護士会を「神奈川県弁護士会」にするという案です。

私個人の意見としては横浜弁護士会という名前は歴史があるし,センスもいいので,改名には一応反対です。
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# by ofuna-law-02 | 2008-11-27 22:35 | 弁護士・検事・裁判官

権利外観理論(権利外観法理)

民法と商法などのいわゆる私法上の概念ですが,「権利外観理論(権利外観法理)」というものがあります。
「けんりがいかんりろん(けんりがいかんほうり)」と読みます。何となくかっこよさそうな理論なのだろうなあと思って頂けるといいですね。

定義(意義)は,次のとおりです。すなわち,
ある虚偽の外観が存在し,その虚偽の外観を信頼した第三者がいる場合は,虚偽の外観を作出した帰責性のある本人の犠牲のもと,虚偽の外観を信頼した第三者は保護されるという理論です。

シンプルに法律要件と法律効果で説明しますと,
法律要件は,①虚偽の外観の存在,②本人の帰責性,③第三者の信頼,となります。
法律効果は,信頼の保護,です。
法律要件に事案があてはまると,法律効果が発生します。

権利外観理論の具体的な現れとしては,民法94条があります。
民法94条は,通謀虚偽表示の無効と善意の第三者の保護の規定です。
例えば,Aさんは税金逃れの目的でBさんと通謀(口裏合わせ)し,自己所有の不動産を売ったことにしてその所有権の登記をA名義からB名義に移転していた。Bさんは,それを奇貨として(利用して),本当はAの所有物である上記不動産について,Cさんに対し,自分のものであると言って売りつけた。その際,Cさんは,登記の名義がBにあることから,Bに所有権があると善意で信頼して,上記不動産を買った,という事例があるとします。

この事例において,不動産の真の所有者はAです。AはBと通謀虚偽表示で登記名義をBにしました。これについては,民法94条1項により,無効になります。ですから,所有権は移転せず,この所有権の所有者はAのままであるのが原則になります。
しかし,登記名義はBであり,Bが所有者であるかのような「虚偽の外観」が存在します。
Cは,この虚偽の外観を善意で信頼(「第三者の信頼」)しました。法律用語で,「善意」とは「知らなかったこと」を意味します。
Aは,この虚偽の外観作出について,Bと通謀してやったのですから,責められるべき責任があります。これが「本人の帰責性」ありということです。
このような場合のことを,民法94条2項は規定しており,この場合の善意の第三者を保護することになっています。したがって,Cは保護され,Cはこの不動産の所有権を取得することになります。例外にあたるのです。

権利外観理論が認められる趣旨は,取引の安全の保護にあります。
上記事例で,Cが保護されないと,Cの取引の安全が害されるので,一定の要件のもと,Cを保護しているのです。

あえて極端に言えば,「正直者は救われる」ことになります。
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# by ofuna-law-02 | 2008-11-27 19:32 | 民法

不法行為の損害賠償請求

一般的に,不法行為とか,慰謝料請求とか,損害賠償するぞとか,ありますよね。
今日は,これらの類の法理論を説明したいと思います。

これらは法的には,通常,「不法行為の損害賠償請求権」と言います。
根拠法令は,民法709条です。
法律の条文というのは,ある効果(法律効果)と,それを発生させるための要件(法律要件)から構成されています。
民法709条の場合,効果(法律効果)は,「損害賠償請求権の発生」です。
この効果(法律効果)を発生させるための要件(法律要件)は,民法709条の場合,次のとおりとなります。すなわち,
① 故意または過失
② 権利侵害(違法性)
③ 損害の発生
④ ①と④との間の相当因果関係
以上となります。

具体例で説明します。
交通事故の場合で説明します。

Aさんは,車を運転中,わき見をしていたため,前方を横断中の自転車に乗ったBさんにぶつかって,怪我を負わせた。Bさんは,怪我の治療費が合計5万円かかった。通院もして精神的に傷ついた。自転車の修理費は修理屋によると3万円かかるため,同じ自転車の新車が2万円なので,新しいのを買ったほうがいいと薦められた。

上記事例の場合,Aさんには,「わき見運転」という①過失が認められます。過失とは,簡単に言ってしまうと,不注意,です。

この過失により,Bさんは,怪我をしたので「生命身体の安全」「所有する自転車(財産権)」が害されました(②権利侵害(違法性))。権利侵害とは,言葉どおりある権利の侵害であり,違法性とは,簡単に言うと,常識的にみて悪いということ,を言います。

そして,Bさんには,「怪我の治療費5万円」と「精神的苦痛に対する慰謝料相当額」と「自転車の被害額」という③損害が発生しました。ここで精神的苦痛に対する損害賠償のことを一般に「慰謝料」と言います。算定はなかなか難しいのですが,この場合は仮に10万円としましょう。さらに,自転車の損害については,最大限修理費3万円で,最低限新車代2万円になります。

最後に,④①と③との相当因果関係については,「①がなければ③がない」という公式がなりたつか、を考えた上で,それが常識的に相当かを判断します。上記事例の場合,わき見運転という過失がなければ,治療費5万円はかからなかったですし,精神的苦痛もなかったですし,自転車も壊れませんでした。ですから上記公式がなりたちます。加えて,その公式をみとめることが常識的に相当かを判断すると,自転車の修理費3万円というのは相当ではないですが,新車代2万円なら相当であり(経済的実損と言います),5万円+10万円+2万円=17万円の損害については相当因果関係のある損害と言えます。

以上のように,要件(法律要件)が充足されましたので,効果(法律効果)が発生します。すなわち,「17万円の損害賠償請求権が発生」するのです。

これが不法行為の損害賠償請求権の法理論です。
できるかぎりシンプルに説明したつもりです。厳密にいうと粗があるとおもいますが,ご容赦ください。
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# by ofuna-law-02 | 2008-11-27 19:31 | 民法