仕事との距離感

私の法曹経験は,平成11年から15年までが検事,平成15年から現在までが弁護士で,検事4年,弁護士6年,トータルで10年目となります。

検事の仕事は,主は刑事事件で,中身は,①捜査と②公判の2つ。①捜査では,被疑者の取り調べが中心,しかも,否認する被疑者をいかに合理的に説得して自白させるかということに神経を使う仕事です。②公判は,十分な立証活動を行い,有罪を獲得し,しかも,裁判所に適正な量刑を下してもらう仕事です。

弁護士の仕事は,私の場合は,大都市の大事務所(企業関係の事件が中心)とは異なり,街の弁護士ですから,個人の依頼者からの事件が大半で,例えば,債務整理(自己破産,任意整理,民事再生),債権回収,損害賠償,慰謝料請求,交通事故,内容証明作成などの民事事件と,離婚,相続,遺言書作成などの家事事件が中心です。具体的には,法律相談を経て,証拠収集(契約書,念書,覚書,領収書などの書証や,写真などの物証,さらにヒアリングをまとめた陳述書の作成など)をし,訴状ないし申立書等の起案及び裁判所への提出,その後,期日に出廷,という流れの仕事が主です。もちろん,その他,常時1~2件の数で,刑事事件,少年事件,破産管財事件などもあります。

私が思う,検事の仕事と弁護士の仕事の共通点は,必ず「人」が絡む,「法的」な問題を,いかに「解決」するか,というところでしょうか。「人」については,多くの利害関係人が登場し,必ず,対立当事者がいて,それぞれの供述がばらばらで,どれが嘘でどれが本当かが分からないというのが常態。「法的」というのは,規範となる法律がどのような規定ぶりなのかを常に意識し,勉強し,駆使していく必要があるということ。「解決」は,なかなか本当に難しいのですが,一定の道筋をつけなければならないことです。

それと「人の暗部」と常に向きあう仕事であることが特徴です。
この「人の暗部」であることが,非常にやっかいで,親身になりすぎると,その人の暗部から発せられるマイナスパワーに影響され,自分まで病んでしまうおそれがあるのです。
私の場合,法曹1年目は,自分でいうのもなんですがパワフルに仕事に取り組んでいたのですが,2~3年目から疲れがでてきて,4年目でいわば燃え尽きてしまい,仕事との距離感をいかに保つことが大切かを肌で感じました。
それで心機一転弁護士になったときは,仕事から距離を置き,客観的・第三者的に捉えるようにしました。言葉は悪いですが「所詮他人事」と割り切るようにしていたのです。しかし,それは今考えるとあまりに冷淡で形式的で間違いだったと思っています。

弁護士も6年目となり,いま心がけているのは,近すぎず離れすぎずということです。それと,自分のこれまでの経験に照らし,マイベストを尽くすこと。ベストではなくて,「マイベスト」.つまり,自分のできる範囲で背伸びせずに仕事と向きあう,「人の暗部」と向きあうことです。さらに,この依頼者とだったら一緒に紛争の解決に向けて頑張れそうかという直感も大事にしています。

結局,最初(1~4年目)は近寄りすぎていて,その後(5~6年目)は離れすぎていて,今(9~10年目)はその中間のポジションにいるという感じですね。

司法修習生時代の指導弁護士(経験30年以上)が,当時,「完璧を求めてはならない」というようなことを私に言ってくれていたのですが,それが今,身にしみています。
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by ofuna-law-02 | 2008-12-01 01:18 | 弁護士・検事・裁判官
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